大変な経験

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裁判ということになれば、何年もかかることだってある。T夫さんとO子さんの場合、まだラッキーだったといえるのかもしれない。ところで、屋根ごと全部飛んでしまった理由は、何だったのだろう。「瓦の下には野地板という板を敷くそうなんですが、その板を支える『たるき』という木材が、そもそもしっかりとり付けられていなかったようです。それで下のたるきごとすべて飛んでしまったということなんです」一時期O子さんは、もうこんな危なっかしい家には二度ともどりたくないと、T夫さんに訴えたという。しかし、T夫さんはこんな事故のあとだからこそ、業者だって丁寧にやるはず。もうどんな家よりも安全だ、とO子さんを説き伏せた。「確かに主人のいう通り、今年の台風では、もうビクともしませんでした。本当に大変な経験をしましたが、私もこれで少しは強くなった気がします。イザというときに、何もできないようではダメですね。子どもたちだっているんだし…。だからといって、こんな経験は二度とごめんですけどね(笑)

地域は避暑地

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その生活は1年ももたなかった。この地域は避暑地として有名な地方だけに、冬は零下まで下がる。そのため、夫妻は冬場だけは息子の住む東京で一緒に暮らすことにして、晩秋のある日、高原の家をあとにした。そして、再び我が家に戻ってきたのは、4月も半ばになってのことだった。「家に入った瞬間、驚惜しましたよ。床は明らかに傾いているし、壁にはヒビが入るが、入っている。初めは地震でもあったのかと思いました」すぐにこの家を建てた業者に連絡して調べてもらったが、さっぱり原因がわからない。そこで、夫妻は弁護士を通して紹介してもらった、別の専門家に調査を依頼。結局地面が凍って家の基礎を下からもち上げてしまったために、家が傾き、壁にヒビや亀裂が入ったことが判明した。「通常、寒冷地に家を建てる場合には、その地方では、地面が深さ何mまで凍るのかよく調べてから建てるものらしいんですよ。私の家だって、この地域の凍結深度よりも家の基礎の方をより深くしておけば、何の問題も起こらなかった…。じつに単純なミスだったんです」これからの人生を大好きな高原で、のんびりと過ごそうと思っていた夫妻の夢は、たった1年であっけなく消えてしまった。